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ブログBLOG

2019年〜2020年

契約書の基礎知識に関するまとめです。
主に法務部門の方を対象にした記事まとめです。
英文契約書について解説している記事のまとめです。
その他の法律関連知識についての記事のまとめです。
2020年5月29日(金)
株式譲渡契約の翻訳で気を付けていること

近年、M&Aで事業を拡大する例が増加し続けています。技術、顧客層、資金力など、会社ごとに強みとするところは異なりますが、これらの強みをうまく組み合わせることによって、これまでにない製品やサービスが生まれる可能性があり、これを実現するための手法として、M&Aというのは一つの強力な手段です。個々の業界がその専門性を深化させているこの時代にあっては、その重要性はより一層増してきていると言えます。

中でも買収の態様によるものは、一から技術、製品、サービス等を開発し、事業に育て上げるのではなく、既に事業として成立しているものについて、自社の事業との相乗効果が見込めるなど、将来見込める収益が取得にかかる対価を上回ることが想定される場合に、対価を支払ってその一部又は全部を獲得するものであり、想定どおりに物事が進んだ場合には、事業規模の拡大、既存事業の強化など、多くのメリットをもたらすものです。

他方、事業は、様々な要素が複雑かつ有機的に絡み合って成立しているものであり、一つひとつが異なるものであることから、対象が会社、事業、株式のいずれであっても、その買収に際しては、やはり様々な考慮が必要となってきます。

株式譲渡契約は、ある会社の株式を当事者間で譲受する際に締結される契約をいいます。これにより、譲り受ける当事者は、譲り受けた株式の範囲で、当該株式を発行している対象会社の支配権を有することになります。

当該対象会社の事業方針を決定することを希望している場合は、当然ながら、大量に当該会社の株式を取得することになり、通常はその対価の額も大きくなりがちです。このとき、買収後に、対象会社の財務状況が実は極めて悪かったという事実や、当該会社と他社との間で締結されている契約の条件が当該会社にとって非常に不利なものである事実が事後的に判明しても、採ることのできる対策は非常に限られており、結果的に巨額の支出に見合った収益を上げることができず、買収は失敗に終わり、お荷物を抱え込むだけとなってしまった、ということになりかねません。

このような状態を避けるために、株式譲渡契約には、非常に細かく、かつ、非定型的な、個別の事情に即した諸規定が定められることが多いと言えます。当然、すべてを規定すると膨大な契約になってしまって、交渉が進まないということになりかねませんし、このような案件は時間との戦いで迅速に進めていく必要がある場合がほとんどかと思いますので、当該契約で最も実現したいことを中心に、交渉対象を絞って規定していくのが通常であろうと思われます。(交渉が難航した場合に備えて、あえて捨てるための規定を入れる場合もあるでしょう。)

逆に言えば、このような契約では、その規定、そして当該規定に関する交渉の経過を見ることによって、相手方が何を重視しているのか、ということが見えやすいということをも意味します。

翻訳をする際には、このような条項をいち早く見抜き、他の部分も然ることながら、当該条項を極めて慎重に取り扱うようにしています。

2020年1月20日(月)
Federal Court Subject Matter Jurisdiction(連邦裁判所の事物管轄権)

連邦裁判所の事物管轄権は限定されています。

提訴は、Federal Rules of Civil Procedure(連邦民事訴訟規則)Rule 3によります。

【参考】
Rule 3. Commencing an Action
(提訴)
A civil action is commenced by filing a complaint with the court.
(民事訴訟は、裁判所に訴状を提出することにより、提起される。)

連邦裁判所で提訴するには、連邦裁判所がその主題について管轄を有している必要があります。

連邦裁判所の事物管轄権は、以下の事由を考慮して判断します。

1.Diversity of Citizenship
2.Federal Question

2020年1月17日(金)
対物管轄及び準対物管轄(In Rem and Quasi In Rem Jurisdiction)

物に対する管轄権です。

対人管轄が及ばない場合や、管轄地域内にある物のみに関する請求である場合は、一定の要件の下で、対物管轄が認められる場合があります。

ちなみに、Quasiという語は、法律文書によく登場します。「準」という意味です。ここでのQuasi In Rem Jurisdictionとは、管轄地域にある物に対する権利に関する管轄です。

Quasi In Rem Jurisdicitonが認められると、裁判所は、被告の財産の差押え等を命じることができます。

2020年1月16日(木)
最小限の接触の法理(Minimum Contact Doctrine)

対人管轄を非居住者に及ぼすには法廷地と一定限度の関係を必要とする、という法理です。

これは、アメリカ合衆国修正第14条に基づくものです。

(参考)
Amendment XIV
Section 1.
All persons born or naturalized in the United States, and subject to the jurisdiction
thereof, are citizens of the United States and of the state wherein they reside. 
No state shall make or enforce any law which shall abridge the privileges or 
immunities of citizens of the United States; nor shall any state deprive any 
person of life, liberty, or property, without due process of law; nor deny to any 
person within its jurisdiction the equal protection of the laws.


(アメリカ合衆国で出生し、又は帰化した者であって、米国の管轄に服する者は、アメリカ合衆国及び当該者が居住する州の市民である。いかなる州も、アメリカ合衆国民の特権又は免責特権を縮減する法を制定又は執行してはならず、適正な手続なく、いかなる者の生命、自由又は財産を奪ってはならず、その管轄に服するいかなる者の法の平等な保護を否定してはならない。)

接触として、以下が求められます。
1.被告が知りながら自身を法廷地の法に服していること
2.法廷地における被告の行動により、当該地の裁判所に呼び出されることが予見可能となることを知り、又は知るべきであったこと

これに加えて、公平性も求められます。

2020年1月14日(火)
管轄の同意について(米国) - Civil

米国における管轄の同意は、大きく分けて2種類あります。

実際の同意は、原告の請求に対して防御し、裁判所の管轄を受け入れるために、異議をとどめることなく出廷することによりなされます。

管轄を争うために出廷すると、特別な出廷となります。

また、黙示の同意もありますが、管轄地に物件を所有しているというだけでは、人的管轄は認められず、訴訟が直接的に当該物権に関するものであることを要します。

被告の居住地によっても人的管轄が生じ得ます。

2020年1月13日(月)
Long arm statute(LAS)

制定法が適用される地に居住していないが、その地と一定の接触を有する者に対して、管轄を及ぼすことができるとする制定法です。

当然、限界はあります。すなわち、憲法上、Due Process条項がありますので、十分な最低限の接触(sufficient minimum contacts)が必要となります。

法廷地において、被告とされる者が実質的、継続的、そして組織的に活動を行っている場合には、一般管轄が認められます。

これ以外の場合には、一定の条件を満たすことで、特定管轄が認められる場合があります。

2020年1月12日(日)
In personal Jurisdiction

対人管轄が認められるための要件は以下のとおりです。

1.米国内で個人的に送達を受けた場合
2.当事者がforum state(提訴された地)に居住している場合
3.当事者が管轄に合意した場合(明示又は黙示を問わない。)
4.当事者の行為がロングアーム法(long arm statute)に該当する場合

2020年1月10日(金)
訴状でのDiscovery要求

これまでに見たDiscoveryの要求は、訴状においてなされることがあります。

請求原因を並べた後に、Disoveryの要求(質問書に回答せよ、とか、〜についての情報を提供せよ、のように)が記載されている例があります。

2020年1月9日(木)
Discovery関連 - Duty to Supplement

Discoveryにおいて開示された情報に不足又は誤りがある場合、回答を補足しなければなりません。

2020年1月8日(水)
Discovery関連 - Request for Admissions

一当事者が、相手方当事者他のために用意する書面による要求で、事実に関する事項が真実であること、文書の真正性などを認めることを求めるものです。

「自白要求」などと訳されることがあります。

裁判所の許可は不要です。

送達後に異議申立期間が設けられています。

2020年1月7日(火)
Discovery関連 - Depositions

宣誓の下で行われる裁判所外での証言録取です。

Examination before trialとも言われます。

速記者による記録及び書写しが要求されます。

原則として、10を上限とし、また同じ当事者に対しては1回のみ許されます。

2020年1月6日(月)
Discovery関連 - Expert Witness Disclosure

審理で証言する専門家証人の正体及び証言の性質に関する情報を強制的に交換するものです。

当事者が不当にこの要件を遵守しなかった場合、異議申立てがあっても理由がなければ、専門家証人による証言を証拠として採用することはできません。

2020年1月5日(日)
Discovery関連 - Medical Examinations

当事者の精神的又は身体的な状態に争いがある場合、精神又は身体についての検査が許可されます。

検査対象者は、後に医療報告書の写しを請求できます。

2020年1月4日(土)
Discovery関連 - Inspections

相手方が所有、管理等している文書等を閲覧してDiscoveryを行うものです。

電磁的記録も対象となります。

2020年1月3日(金)
Discovery関連 - Interrogatory

質問書によるDiscoveryです。

一当事者が質問書を相手方に送付し、相手方はこれに回答しなければなりません。

基本的には求められた情報を提供するか、又は異議を述べます。

また、回答は、完全かつ直截的である必要があります。

ただし、一定の場合には情報を提供しなくてもよいとする例外があります。

なお、Interrogatoryは、原則として、25以下に制限されています。

2020年1月2日(木)
Discovery

アメリカでは、日本にはないDiscoveryという手続があります。

この手続の趣旨は、審理における争点を絞り、文書及び証拠の開示を受け、審理対象とすべき争点を特定かつ明確化することにあります。

このDiscovery手続は、主に以下のような方法で構成されています。

1.Interrogatories
2.Inspections
3.Medical Examinations
4.Expert Witness Disclosure
5.Depositions
6.Request for Admissions

そして、これらを補足するのが、7.Duty to Supplementです。

2019年12月31日(火)
actionとsuitの違い

法律文書の翻訳をしていると、actionとsuitという単語が並んで登場することがあります。

いずれも単に「訴訟」と訳される例が多いようです。

しかし、厳密には意味が異なります。

actionは、コモンロー上の訴訟です。

suitは、エクイティ上の訴訟です。

したがって、両方登場する場合は、それぞれ「〜上の訴訟」と訳し分けています。

2019年5月17日(金)
「約束」と「契約」の違い

「「約束」と「契約」は何が違うのか」とよく聞かれることがあります。

これらは似て非なるものです。

約束は道徳的なものです。

お互いを信頼して、ある一定の事項を約し、相手が任意にその約したことを果たしてくれることを期待することになります。

万が一期待が裏切られたとしても、それは仕方のないこととして、受け入れるしかありません。

しかし、ひとたび契約がなされると、そうはいきません。

「契約」は、法的な制度です。

道徳的なものに過ぎない約束に、法的拘束力を与えるものです。

法的拘束力を与えるということは、もし契約に定めた事項を守らなければ、以前「契約の効力」について書いた記事にあるとおり、裁判所による強制の対象となるということです。

このような強力な拘束力を与えるものであるからこそ、その成立が争われることもしばしばあります。

これについては、また機会をあらためてお話したいと思います。

2019年5月16日(木)
FRAND宣言

アップル対サムスンの事件で有名になった言葉です。

Fair, Reasonable And Non-Discriminatoryの頭文字をとったものです。

それぞれ「公正」「合理的」「非差別的」を意味します。

ある技術について、特許出願をする一方で、当該技術を基に国際標準・規格を創設しようとすることがあります。

このとき、その国際標準・規格に適合しようとすれば、当該特許の実施が不可避となる場合があります。

そうすると、その国際標準・規格に適合しようとする他の事業者は、特許権者に対してロイヤルティを支払って、特許の実施許諾を受けることが必要となります。

このときに、国際標準・規格に適合しようとする事業者の足元を見て、特許権者が非常に高額なロイヤルティを設定するインセンティブが働くことが想定されます。

これを避けるため、実施許諾については、公正、合理的かつ非差別的な条件で行うこと、つまりFRAND条件で実施許諾を行うことを宣言させるということが行われています。

これがFRAND宣言というものです。

このFRAND宣言をしているのに、特許権者が不当な権利行使をしたり、高額な損害賠償請求をしたりしてきたときに、FRAND宣言をしていることをもって抗弁とすることがあります。

なお、FRAND宣言の根拠は、根拠は権利濫用の禁止(民法1条3項)とされています。

権利濫用の抗弁とはせず、敢えてFRAND宣言の抗弁としているのは、前者は主観的態様を含め総合考慮をすることを前提とするのに対し、FRAND宣言は特定の要素に着目して類型的に判断する点で異なるためと言われています。

2019年5月16日(木)
知的財産法の構成

「知的財産法」という名の法律はありません。

いくつかの法律群が知的財産法という分野を形成しています。

主要な法律は以下のとおりです。

特許法
実用新案法
意匠法
著作権法
商標法
不正競争防止法

これらはそれぞれ目的が異なります。

特許法、実用新案法、意匠法は、それぞれ、発明、考案、意匠の創作を奨励し、産業の発達に寄与することを目的とします。

著作権法は、著作物等の公正な利用に留意しつつ、文化の発展に寄与することを目的とします。

商標法は、商標を保護することで、使用者の業務上の信用を維持し、産業の発達に寄与します。産業の発達に寄与することは、最初の3法と同じですね。

そして、不正競争防止法は、事業者間の公正な競争を確保し、国民経済の健全な発展に寄与します。

最後の不正競争防止法は、他の5法と比べて毛色が異なります。

他の5法は、何かを保護の対象としているのに対して、不正競争防止法は、何かを保護対象とするのではなく、特定の行為を規制対象にしているからです。

これらの法律の分類方法はいくつかあります。

主には、創作法と標識法、産業財産権法と著作権法、権利付与法と行為規制法、という分類があります。

それぞれ、創作を保護するのか、(既に存在する)標識を保護するのか、産業の発展に寄与するのか、文化の発展に寄与するのか(また、アイデアを保護するのか、表現を保護するのか)、そして、上記で触れたとおり、権利を保護するのか、行為を規制するのか、という観点の分類方法となります。

各法を読み解く際に、上記の観点を踏まえると、よく理解することができます。

2019年5月15日(水)
契約期間について

契約を締結しようとする際、契約書の審査を法務部に依頼することが多いと思います。

法務部で審査を終えた契約書を見ると、いくつかコメントが入っていることがあります。

その中に、「期間は実務に照らして貴部門でご判断ください」というようなコメントが入っていることはないでしょうか。

この場合にどの程度の期間を入れるべきか、迷うことが多いのではないでしょうか。

契約の内容によって、その考慮要素は色々あります。

いくつかキーとなるポイントを挙げてみましょう。

相手方と取引をするのが新規であれば、信頼に足る取引先かどうかを見るために、短期間とすることが考えられます。

長くお付き合いしたい取引先には、長期の契約をお願いすることになるでしょう。

現時点でこの契約を締結するのがベストであっても、近い将来市況が変わることが予想され、その際には契約内容や相手方を変えたい、というような場合には、やはり短期の契約とするインセンティブが働きます。

自社に有利な条件を定めることができるのであれば、長期にしておくのがよいでしょう。更新時には契約条件の見直しが発生するのが一般で、その場合には契約条件が悪化してしまうことも考えられるからです。

このように様々な考慮要素を踏まえ、契約期間を決定していくことが求められ、この契約類型だからこの期間、と一律に決まるものではないのですね。

2019年5月14日(火)
「及び」「並びに」「又は」「若しくは」

読者の皆様はこれらの言葉の違いがお分かりでしょうか。

これらは、分かってしまえば簡単なことで、契約書などの法律文書を読むときに非常に役立ちます。

まず、「及び」と「並びに」です。

具体例から入ります。

「私は、りんご及びみかん並びにトマト及びきゅうりが好きだ。」

「及び」と「並びに」はいずれも英語では“and”の意味です。

それにもかかわらず、この二つの言葉を使い分けているのはなぜでしょうか。

りんごは果物、みかんは果物、トマトは野菜、きゅうりは野菜です。

なんとなく見えたでしょうか。

上記で抽象化したものを先ほどの文にあてはめ直してみましょう。

「私は、果物及び果物並びに野菜及び野菜が好きだ。」

いかがでしょうか。

つまり、「及び」は小さなグループ(ここで果物グループ)に用いており、そのグループと並列のグループ(ここでは野菜グループ)をつなぐときに「並びに」を用いています。

さらにグループが増えたとしても、最大のグループにのみ「並びに」を用い、それ以外のグループは「及び」でまとめます。

次に、「又は」と「若しくは」です。

これも上記同様のルールが当てはまります。

「又は」を最大のグループに用い、それ以外は「若しくは」でつなぎます。

「土曜日には、遊園地若しくはプールで遊び、又はホテルでのんびりするつもりだ。」

ここではどのようにグループ分けをすべきでしょうか。

まず、最大のグループに「又は」を用いるということでした。

「又は」の前後は、「遊園地若しくはプールで遊ぶこと」と「ホテルでのんびりすること」です。

より簡単にすると「遊ぶこと」と「のんびりすること」の並列です。

これは、土曜日にどのようなことをするのか、という大きな視点でのカテゴリー分けです。

遊ぶのか、のんびりするのか、ということです。

次に、「遊ぶ」こととした場合に、さらに、どこで遊ぶか、のカテゴリーの構成要素として、「遊園地」と「プール」が並べられています。

「あなたは、42.195kmを走り切ったら、野菜スムージー若しくは果汁100%ジュース及び緑茶若しくは麦茶又は牛乳並びに水素水を飲むことができる。」

さて、「あなた」が42.195kmを走り切ったとき、飲むことのできるものについて、どのようなオプションがあるでしょうか。

ぜひ考えてみてください。

そして、これらが実際に契約書で使われる場合、正しく理解しなければ、契約違反となってしまうので注意が必要です。

以下の例を見てください。

乙が甲から許諾されたライセンスの範囲はどこまでなのでしょうか。

「甲は、乙に対し、本ライセンスに基づき、本製品の譲渡若しくは貸与及び製造若しくは加工又は分解並びに再実施許諾をすることを許諾する。」

このような複雑な文を翻訳をする際には、細心の注意が要求されます。

2019年5月12日(日)
クラウドシステム導入の注意点

現在多くのクラウドベースのシステムが導入されつつあります。

法務分野でも契約書簡易審査、管理等、これから益々発展していくことが期待される分野でもあります。

しかし、企業においてクラウドベースのシステムを導入するに際しては、様々な検討がなされることでしょう。

例えば、クラウドにデータをアップロードするということは、クラウド事業者のサーバーにデータをアップロードすることです。

したがって、情報が第三者に提供されることになります。

この情報が他社情報である場合、契約内容によっては、クラウドにアップする、つまり第三者に提供する前に、事前に承諾を得ることとされている場合には、その対応が必要です。

また、個人情報をアップする場合には、個人情報保護法等にも留意し、場合によっては本人の承諾を事前に得る必要があるかもしれません。

さらにサーバーが国外にある場合には、別途適用法令がないか確認が必要でしょう。

新しい分野ですので、まだ不明確な部分はありますので、一つひとつ自社で考え方を整理していくことになるでしょう。

使わずにはいられないものなので、うまく付き合っていきたいものですね。

2019年5月12日(日)
契約書の雛形

自社で雛形を用意しておくことのメリットは何でしょうか。

それは、自社にとって都合のよい土俵、つまりホームで戦うことができるということです。

自社で用意する雛形の内容を誰よりもよく知っているのは自社です。

その特性を最大限に生かして、交渉に臨むことができるのです。

自社で譲れない点は厚く保護し、他方で妥協できる点を把握しておくことで、交渉は有利に進めることができます。

相手方の契約書の雛形を使用せざるを得ない場合は、自社雛形の場合と比べて、慎重に審査する必要があります。

それは、相手方の土俵で戦うことと同じであり、いわばアウェーでの交渉となるからです。

相手方はその雛形の内容を知り尽くしています。

自社にとって最大限有利になるかたちで雛形を用意しているはずです。

どこに肝があるのか、自社にとってのリスクがあるのか、相手方の立場に立ってどういう観点からこの雛形を作成したのかということに思いを馳せ、相手方の戦略を想像してみます。

その上で、自社のメリット、譲れない線を考えて、お互いを尊重し合って、WinWinとなる最終的な着地点を目指すことになります。

契約を締結しようとする際には、可能な限り自社の雛形を使うようにした方がよいでしょう。

そして、日頃から実務でのリスクや法改正を把握し、適宜雛形のメンテナンスをしていくことで、自社にとってより有利にビジネスを進めていくことができるようになります。

2019年5月12日(日)
「推定する」と「みなす」

「推定する」と「みなす」は、混同して使われやすい言葉です。

「推定する」というのは、本当はそうではないけれども、とりあえずそのように扱っておいて、相手方の反証があったときには、その扱いをやめて、相手方の反証どおりに扱うことを許すといいうものです。

反証の余地があるということです。

これと対比する概念として「みなす」という語があります。

これは、断定することであり、本当はそうではないものを、そうであると断定します。

つまり、「推定する」とは異なって、相手方の反証があっても、そうであるとみなした以上は、それとは異なる取扱いを許さないものです。

民法で具体的に見てみましょう。

(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

762条2項は、夫婦の財産の取扱いについて定めます。
1項は、原則として、婚姻中に得た財産であって、自分の名で取得した財産は、その取得した者の財産となります。
しかし、2項では、ある財産が夫婦のいずれに属するのか明らかでない場合は、夫婦の共有財産に属すると「推定」されます。

「推定」なので、この財産は共有ではなく自分だけのものだ、と主張したい場合は、自分の単独所有であることを証明することができれば、推定が破られるので、裁判所は、その証明者の単独所有であると認めることができます。

仮にこれが「みなす」とされていた場合、「みなす」は上記のとおり断定することと同義なので、反証を許さない、つまり、単独所有であることを証明したとしても意味がありません。

つまり、いずれに属するのか明らかでない財産は、必ず夫婦の共有とされることになります。

ただ、このようなケースでは、立証できたにもかかわらず、あえて共有にしておくことは衡平の概念に反しますよね。

そこで、共有か否か分からない間は共有ととりあえず「推定」しておいて、いずれかの単独所有であることが立証されれば、その人の単独所有とする方がよい、と考えられたため、「推定する」の語が用いられています。

他方、「みなす」が使われている例としては以下のものがあります。

(婚姻による成年擬制)
第七百五十三条 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。

これは、未成年が婚姻すると、成年として扱われることを定める条文です。

ここまでお読みいただいた方は、ここで「推定する」ではおかしいことはお気づきかと思います。

未成年者であることを前提に、婚姻をすれば成年として扱われる、という条文なので、未成年であることは、当然に反証されてしまいます。

ということは、推定しても無意味です。

したがって、ここでは「みなす」が適切ということになります。

それから、「みなす」は、「推定する」が用いられる場面よりも、法律上の地位の早期安定の要請がより強く働く場面でも用いられることがあります。

例えば、以下の条文を見てください。

(居所)
第二十三条 住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。
2 日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。

この条文は、住所が分からない場合は、その者の居場所を住所と「みなす」としています。

つまり、この場合には、居所(人が継続して住んでいる場所であって、住所ほどその人との結びつきが密接ではない場所をいいます。)が住所と断定され、後で住所が分かったとしても、それまで居所を住所として扱ってきた事実に変動はないことになります。

住所は様々な法律関係の基礎となるものなので、後で住所が判明したからと言って、それまでの法律関係を見直すことは現実的ではなく、また、様々な利害関係人に迷惑を掛けることになるので、「みなす」の語が用いられています。

2019年5月8日(水)
二段の推定

契約の成立を証する書面である契約書をはじめ、裁判では文書の成立が争われた場合、その成立の真正を立証する必要があります。

これを規定するのは民事訴訟法228条です。

民事訴訟法
(文書の成立)
第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3 公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5 第二項及び第三項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。

そして、契約書は私文書に属するため、第4項が関係します。

第4項は、本人又は代理人の署名又は押印があれば、申請に成立したものと推定されることを定めます。

これは、本人又は代理人「の意思による」署名又は押印があれば、と読みます。

そうすると、本人又は代理人の意思によることを立証しなければなりません。

しかし、意思の有無を立証するのは大変難しいです。

「本人」の「押印」のパターンで考えてみます。

228条4項により文書の真正な成立を推定するためには、本人の意思による押印が必要です。

ここでは、@押されている印が本人の印かどうかがまず問題となり、次にAそれが本人の意思によるものなのか、が問題になります。

@については、実印であれば印鑑証明書を徴求することにより、本人の印であることが分かります。

しかし、Aは実印であったとしても、誰かが印章を盗んで押印したかもしれないため、実印であることだけをもって本人の意思によることを立証することはできません。

そこで、この立証の困難を救済するため、(1)本人の実印が押されていれば、本人の意思による押印があったと推定し、A本人の意思による押印があったのであれば、228条4項により、文書は成立に成立したと推定する、という二段の推定が働いているのです。

これが二段の推定と呼ばれるものです。

しかし、これは法律上の推定ではなく、事実上の推定です。

この話は回をあらためてしたいと思います。

2019年5月8日(水)
印紙の意味

いざ契約、というときになって、相手方から「印紙はどうしましょう」と相談されることがあるかもしれません。

相談された場合は、法務部や経理部に問い合わせることになるかと思います。

印紙税は、一定の種類の書面を作成したことで、担税力があるとみなされて課税されるという、非常に独特な税制です。

問題になるのは、ある契約書がこの一定の書面に当たるのか否か、ということが分かりにくい場合です。

例えば、ある業務を行うことを受託し、その結果得られる成果を相手方に納める、という契約があったとします。

この場合、成果ありきで報酬が発生する場合は請負として一定の書面(2号文書といいます。)に該当し、契約金額に応じて印紙税が課税されますが、成果は発生するけれども、成果の出来に関係なく、報酬は支払わなければならない(費やした時間に対して報酬を支払う)という場合には、一定の書面に該当しない、というすみわけが一応できます。

これがどちらの性質なのか分からない、あるいは、その見解について、相手方との間で認識に差がある、というような場合に、印紙を貼るべきか否かということが問題になるのです。

実はこの点が明らかでない場合に法務に聞いても、ぱっと分かることは少ないのではないかと思います。

その場合には管轄税務署に電話をして聞くのが一番です。親切に教えてくれます。

ただ、あまりにも微妙な場合は対象となる契約書をもって、税務署に訪問して直接聞くのがよいでしょう。

そして、事例を蓄積し、自社としての考え方を確立していくことになります。

なお、契約書を作成し、印紙を貼ったら、そこに消印をすることが多いと思います。

これは後にその印紙を再利用できなくすることによって納税したということを示すものです。

なので、印鑑を押さなくても、例えば消せないペンでマークを付けることでも、納税されたことになるのです。

2019年5月8日(水)
契約の効力

契約書を作成することを考えたとき、わざわざ内容を法務に審査をしてもらって、相手方と何度も交渉をして、いざ代表者の方に捺印や署名をしてもらおうとすれば、決裁手続があって、と、契約締結までにはたくさんのハードルがあります。

ここまで慎重にならなければならないのには、ちゃんと理由があります。

それは、法律が契約に強い効果を認めているからです。

単なる約束にはない効果です。

契約で決めた事項が果たされなかった場合に、契約書を裁判所にもっていけば、裁判所が相手方に約束を果たすよう強制してくれます。


なぜ、ここまで強い効果が与えられているのでしょうか。

それは、契約は、両当事者が合意した取決め事項がその内容になっているからです。

お互い合意したのだから、ちゃんとその合意事項を守りましょう、守らない人がいれば、法律がその人が約束を守るよう強制します、ということなのです。

(ローマ時代のラテン語では"pacta sunt servanda"(合意は守られなければならない)という法諺もあります。

2019年5月7日(火)
契約と法律の関係

契約書は契約という法律行為を証する書面であることは前回の記事で書きました。

ところで、契約と法律の違いは、法務部門の方であれば当然のことですが、そうでない方々にとっては、どういう関係にあるのか分りにくいこともあるのではないでしょうか。

契約は、基本的に、当事者同士が取り決めた事項がその内容になっています。

例えば、これを売ります、買います、いくらで買います、いつ引き渡します、壊れていたら弁償(損害賠償)します、というような取決めです。

しかし、日常生活の場面を考えてみてください。

コンビニで物を買うときに、そこまで細かく決めてから買っている人はいません。

そんなことをしていたら時間がかかって仕方ありません。

でも、これも立派な売買契約です。

この場面で決められているのは、その物を売る/買うということと、いくらで売る/買うということだけです。

実は、何を売買し、それがいくらか、ということが決められていれば、それは民法という法律によって、売買契約である、とされているのです。

そして、決めなかった細目については、民法が適用されて、内容が補充されます。

例えば、コンビニで雑誌を買ったとしましょう。

家に帰ってよくよく見てみると、破れているページがあったのを発見しました。

そこで、コンビニに文句を言いたい。

しかし、コンビニで物を買うとき、「ページが破れていたら、破れていないものと取り換える(追完請求できる)」「払ったお金を返す(損害賠償できる)」というような取決めは当然していません。

でも、それでは不公平ですね。

そこで、民法は、お互い細かいことを取り決めなかったとしても、物の売り買いと代金の支払を約束したのであれば、それを売買契約として扱います。

そして、民法が定めている売買契約に適用される定めが適用される、ということになります。

つまり、法律は、お互い合意しなかったことを補充する役割を担っていると言えます。

ということは、民法で、売買契約に適用されることになっている規定があっても、お互いが合意すれば、異なる条件を適用させることができる、ということでもあります。

その異なる条件が落とし込まれているのが契約であり、それを証するのが契約書である、という関係にあります。

なお、お互いが合意しても変えられない条件もあります。この話はまた別の機会にすることにいたしましょう。

2019年5月6日(月)
契約と契約書
ここでは「業務委託契約」を例に挙げます。

「業務委託契約」と「業務委託契約書」という言葉は混同して使われがちです。

しかし、厳密にはこの2つは異なります。

「契約」は、当事者の意思が合致する法律行為です。

「契約書」は、「契約」が成立したことを証明する書面です。

たまに、「本契約書が成立したことを証するため、本書二通を作成し、甲乙記名捺印の上、各一通保管する。」というような文言が記名捺印欄の上に記載されることがあります。

上記の説明からお分かりのとおり、正しくは、「本契約は・・・」ですね。

ただし、例外的に、契約の成立に書面が必要とされる場合があります。

それは、保証契約です。

保証契約は、ある人が義務を履行しなかったときに、その人に代わって義務を履行するものです。

典型的には、ある人が借金をして、その人がその借金を返さなかったときに、代わりに返済する、というような契約です。

このような契約は、保証人を害することが多いことから、その締結を慎重にさせるために、書面が求められているのです。

書面がなければ、口頭で合意していたとしても、その効力はありません。

反対に言えば、このような特殊な契約以外は、口頭でも成立します。

それではなぜ契約書を作成するのか、ということについては、また機会をあらためてお話したいと思います。

(なお、法令で別途定められている場合、税務上求められる場合等も、契約書の作成は必要です。上記の話は飽くまで原則です。)

2019年5月5日(日)
秘密保持契約の意義

ビジネスを始める前に必ずといってよいほど締結されるのが秘密保持契約書。

毎回毎回結ばなければならないのは面倒だ、という声はよく聞きます。

しかし、秘密を開示する側にとっては、命綱ともなるものなのです。

Gentlman Agreement(紳士契約)とも呼ばれるこの契約書、果たしてどのような意味があるのでしょうか。

それは特許権等の知的財産権に関連します。

ある発明が特許として認められるための要件の一つに新規性というものがあります。

なぜこれが特許に求められるかといえば、それはこれまで誰にも知られていなかったものを世に出したことに対する報償という性質があるのが特許だからです。

そして、新規であるというためには、広く知られていないということが求められます。

もちろん、秘密であることを前提に誰かに教えたとしても、それだけで新規性が失われるわけではありません。

このことは、他社と協業をして得た発明であっても、特許が付与されることを考えればお分かりかと思います。

しかし、秘密であることを言わずに開示してしまった場合、どれだけ開示された人が少数であったとしても、これは公知となってしまい、公に知られているとみなされるのです。

後で「口頭で秘密だと言ってから開示した」と言っても後の祭り。

水掛け論にしかなりません。

そこで登場するのがこの秘密保持契約書です。

秘密保持契約書に当事者が記名捺印していれば、後で秘密として情報を開示したことを証明でき、特許の要件である新規性は開示によって失われていないことが立証できるのです。

そのため、開発を行うとき等には、必ず秘密保持契約書を作成して、発明を秘密として取り扱う旨を合意しておく必要がある、ということになります。

だからこそ、秘密を開示する側としては、秘密保持契約書は命綱ともなり得る大切なものなのです。

細かな中身もさることながら、秘密として開示している、ということが言えることがまずは大事なのです。

2019年5月1日(水)
このブログの役割

こんにちは。

このブログでは、当事務所のニュースに加えて、法律や言葉にまつわることについて
情報発信してきたいと思います。

このブログを通じて、少しでも当事務所に親しみを持っていただければ幸いです。

2019年5月1日(水)
ホームページ開設

この度、ホームページを開設することとなりました。

このホームページを通じて、これまで以上に幅広いお客様と出会えると思うと、
心が高鳴ると同時に、気の引き締まる思いでおります。

どのような案件においても、正確かつ的確なサービスを提供できるよう、
日々精進してまいりたいと思います。

末永くご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

バナースペース

当金法律翻訳事務所

代表翻訳者:当金真悟