秘密保持契約の目的条項

先日の投稿のとおり、大部分が定型的な処理で済んでしまう秘密保持契約ですが、この投稿で説明した秘密情報のほかに大事なものとして、秘密保持契約の目的が挙げられます。

このように書くと、当然だと思われる方々もいるかと思いますが、実は、実務的には盲点となっているところでもあります。

というのも、その定型的な性質上、秘密保持契約は、自社が委託者となる場合、受託者となる場合、相互に秘密を開示する場合、など、いくつかの種類で、各社においてテンプレート化されていることが多く、その中では案件によって異なる目的、秘密保持期間等、限られた部分が空欄とされていて、実務担当部門が必要になれば、社内のイントラからダウンロードして、空欄を埋めて、法務部門を通さずに相手方に提出する、といったことは頻繁に行われているからです(雛型についてはこちらの投稿もご参照ください)。

ここで「盲点」と申し上げるのは、社内でこの秘密保持契約の目的の重要性について周知されないまま、必要な部門が自由にテンプレートを利用できるようにしてしまうと、適当に目的と秘密保持期間を記載して、相手方に提出してしまうおそれがあることが懸念されるからです。テンプレートということは、毎回法務部門を通さなくてもよいように、との配慮が働いている場合がほとんどではないかと思われますが、そうである場合、相手方から特段修正の要求がなければ、目的が曖昧なまま締結されてしまう可能性が高いことを意味します。

そして、なぜこれがリスクとなるかと言えば、例えば自社が開示側だとして、目的を広く、例えば「両当事者の事業活動の推進のため」などとしてしまうと、相手方は、契約に違反することなく、相当程度自由に開示された秘密情報を利用できることになってしまうからです。

悪用された場合には、不正競争防止法等、法律上の救済対象となることはあるかもしれませんが、少なくとも、契約上の責任を問うことが難しくなってしまうことは否定できません。

秘密保持契約をテンプレート化する際には、併せて利用部門の意識を高める工夫も必要となると言えます。具体的には、Word文書で作成している場合には、コメントで目的記載時に注意すべき事項を記載しておくとか、利用方法をまとめたpptを一緒にイントラにアップしておくとか、社内教育を実施するとか、といったところかと思います。