契約と契約書

ここでは「業務委託契約」を例に挙げます。

「業務委託契約」と「業務委託契約書」という言葉は混同して使われがちです。

しかし、厳密にはこの2つは異なります。

「契約」は、当事者の意思が合致する法律行為です。

「契約書」は、「契約」が成立したことを証明する書面です。

たまに、「本契約書が成立したことを証するため、本書二通を作成し、甲乙記名捺印の上、各一通保管する。」というような文言が記名捺印欄の上に記載されることがあります。

上記の説明からお分かりのとおり、正しくは、「本契約は・・・」ですね。

ただし、例外的に、契約の成立に書面が必要とされる場合があります。

それは、保証契約です。

保証契約は、ある人が義務を履行しなかったときに、その人に代わって義務を履行するものです。

典型的には、ある人が借金をして、その人がその借金を返さなかったときに、代わりに返済する、というような契約です。

このような契約は、保証人を害することが多いことから、その締結を慎重にさせるために、書面が求められているのです。

書面がなければ、口頭で合意していたとしても、その効力はありません。

反対に言えば、このような特殊な契約以外は、口頭でも成立します。

それではなぜ契約書を作成するのか、ということですが、それは、両当事者の意思を言葉に落として、将来的に契約内容に疑義が生じることを避けるためです。文言にすることによって、意思の明確化を図ることができるとともに、両当事者間で共通認識を持つことができることに加え、より慎重に契約交渉が行われることとなって、その反射的効果として、契約遵守の意識が高まる、という副次的な効果も生じます。

(なお、法令で別途定められている場合、税務上求められる場合等も、契約書の作成は必要です。上記の話は飽くまで原則です。)