「及び」「並びに」「又は」「若しくは」

読者の皆様はこれらの言葉の違いがお分かりでしょうか。

これらは、分かってしまえば簡単なことで、契約書などの法律文書を読むときに非常に役立ちます。

まず、「及び」と「並びに」です。

具体例から入ります。

「私は、りんご及びみかん並びにトマト及びきゅうりが好きだ。」

「及び」と「並びに」はいずれも英語では“and”の意味です。

それにもかかわらず、この二つの言葉を使い分けているのはなぜでしょうか。

りんごは果物、みかんは果物、トマトは野菜、きゅうりは野菜です。

なんとなく見えたでしょうか。

上記で抽象化したものを先ほどの文にあてはめ直してみましょう。

「私は、果物及び果物並びに野菜及び野菜が好きだ。」

いかがでしょうか。

つまり、「及び」は小さなグループ(ここで果物グループ)に用いており、そのグループと並列のグループ(ここでは野菜グループ)をつなぐときに「並びに」を用いています。

さらにグループが増えたとしても、最大のグループにのみ「並びに」を用い、それ以外のグループは「及び」でまとめます。

次に、「又は」と「若しくは」です。

これも上記同様のルールが当てはまります。

「又は」を最大のグループに用い、それ以外は「若しくは」でつなぎます。

「土曜日には、遊園地若しくはプールで遊び、又はホテルでのんびりするつもりだ。」

ここではどのようにグループ分けをすべきでしょうか。

まず、最大のグループに「又は」を用いるということでした。

「又は」の前後は、「遊園地若しくはプールで遊ぶこと」と「ホテルでのんびりすること」です。

より簡単にすると「遊ぶこと」と「のんびりすること」の並列です。

これは、土曜日にどのようなことをするのか、という大きな視点でのカテゴリー分けです。

遊ぶのか、のんびりするのか、ということです。

次に、「遊ぶ」こととした場合に、さらに、どこで遊ぶか、のカテゴリーの構成要素として、「遊園地」と「プール」が並べられています。

「あなたは、42.195kmを走り切ったら、野菜スムージー若しくは果汁100%ジュース及び緑茶若しくは麦茶又は牛乳並びに水素水を飲むことができる。」

さて、「あなた」が42.195kmを走り切ったとき、飲むことのできるものについて、どのようなオプションがあるでしょうか。

ぜひ考えてみてください。

そして、これらが実際に契約書で使われる場合、正しく理解しなければ、契約違反となってしまうので注意が必要です。

以下の例を見てください。

乙が甲から許諾されたライセンスの範囲はどこまでなのでしょうか。

「甲は、乙に対し、本ライセンスに基づき、本製品の譲渡若しくは貸与及び製造若しくは加工又は分解並びに再実施許諾をすることを許諾する。」

このような複雑な文を翻訳をする際には、細心の注意が要求されます。