特殊な秘密保持契約(秘密保持期間について)

秘密保持期間の定め方は前回記載したとおりですが、たまに特殊な考慮を要する場合があります。

それは、紹介がビジネスとなっている場合です。人材紹介、業務提携先、あるいは業務そのもの、ということもあるでしょうか。

こういった場合、紹介をビジネスにしている側は、紹介する対象それ自体が商売材料ですので、これを自由に使われてしまっては商売が成り立たないことになります。

したがって、こういった場合の秘密保持契約では、紹介する側は、きっちりと、紹介対象に関する秘密を相手方に守らせる必要があることは言うまでもありません。

また、このようなビジネスでは、紹介したからと言って、紹介される側の需要やタイミング等の要因によって、すべてがうまくいくとは限りません。とはいっても、後に知らないところで、紹介された側と紹介対象が何らかの関係を有するに至った、などということも可能性としては十分にあります。そこで、「私たちが貴社に(例えば事業提携先を)紹介したが、運悪くビジネス成立に至らなかった場合であっても、紹介から〇年の間に、当該紹介対象との間で貴社が何らかの関係(例えば取引関係)を有するに至った場合は、最初に紹介した私たちのおかげでその関係が成立したものとみなす」などとして、一般の秘密保持契約らしからぬ、少しビジネスに足を踏み入れたような条項を定めておく必要があります。

これを受けた紹介される側の当事者は、どのような点に気を付けるべきでしょうか。

もし紹介される側だとすれば、「そのタイミングでは難しかったが、その後別の会社から同じ紹介対象(例えば業務提携先)について紹介を受け、そのときには種々の条件が整ったので、正式に紹介してもらうことになった」ということもあるでしょう。このとき紹介した側の企業は、当然紹介料を請求してくるでしょう。

しかし、このときに、上記で見たような条項を含む秘密保持契約を、同じ業務提携先を以前に紹介してきた別の会社とその紹介の際に締結していて、上記のみなし紹介期間内にあるとすれば、この会社にも紹介料を支払わなければならないということになりかねません。

この場合には、「私たちが貴社に(例えば事業提携先を)紹介したが、運悪くビジネス成立に至らなかった場合であっても、紹介から〇年の間に、当該紹介対象との間で何らかの関係(例えば取引関係)を有するに至った場合は、最初に紹介した私たちのおかげでその関係が成立したものとみなす」という条項の提示を受けた当事者(紹介を受ける側)としては、但書で「ただし、その期間内であっても、第三者がまったく関係なく同じ紹介対象を紹介してきて、それをきっかけにして何らかの関係を有するに至ったときには、前述の規定は適用されない」などとして、最初の紹介する側の当事者とはまったく関係のない(その当事者から情報を入手してそれを不正に利用している、などではない)第三者からの紹介であれば適用除外とするようにしておくことが望ましい対処法の一つと言えます。