契約と法律の関係

契約書は契約という法律行為を証する書面であることは前回の記事で書きました。

ところで、契約と法律の違いは、法務部門の方であれば当然のことですが、そうでない方々にとっては、どういう関係にあるのか分りにくいこともあるのではないでしょうか。

契約は、基本的に、当事者同士が取り決めた事項がその内容になっています。

例えば、これを売ります、買います、いくらで買います、いつ引き渡します、壊れていたら弁償(損害賠償)します、というような取決めです。

しかし、日常生活の場面を考えてみてください。

コンビニで物を買うときに、そこまで細かく決めてから買っている人はいません。

そんなことをしていたら時間がかかって仕方ありません。

でも、これも立派な売買契約です。

この場面で決められているのは、その物を売る/買うということと、いくらで売る/買うということだけです。

実は、何を売買し、それがいくらか、ということが決められていれば、それは民法という法律によって、売買契約である、とされているのです。

そして、決めなかった細目については、民法が適用されて、内容が補充されます。

例えば、コンビニで雑誌を買ったとしましょう。

家に帰ってよくよく見てみると、破れているページがあったのを発見しました。

そこで、コンビニに文句を言いたい。

しかし、コンビニで物を買うとき、「ページが破れていたら、破れていないものと取り換える(追完請求できる)」「払ったお金を返す(損害賠償できる)」というような取決めは当然していません。

でも、それでは不公平ですね。

そこで、民法は、お互い細かいことを取り決めなかったとしても、物の売り買いと代金の支払を約束したのであれば、それを売買契約として扱います。

そして、民法が定めている売買契約に適用される定めが適用される、ということになります。

つまり、法律は、お互い合意しなかったことを補充する役割を担っていると言えます。

ということは、民法で、売買契約に適用されることになっている規定があっても、お互いが合意すれば、異なる条件を適用させることができる、ということでもあります。

その異なる条件が落とし込まれているのが契約であり、それを証するのが契約書である、という関係にあります。

なお、お互いが合意しても変えられない条件もあります。この話はまた別の機会にすることにいたしましょう。